上位者は下位者の選択をそれが下位者の選択であるということにより誤りとみなす動機を持つ。

本人の意思に反するものでなければ不利益とは言えない。

例えば私が昆虫を食べている時、私が食べたくて食べているならば私にとって利益であって、不利益を受けているとは言えない。だから昆虫を食べる私を見る時、人は私が食べたくて食べているのか嫌々食べているのかを知ろうとする。

上位者は下位者の地位による不利益を選択の結果として認識する動機を持つ。

下位者が下位者であることによって不利益を受けているならば、相対的に自分が上位者として利益を享受していることになり、下位者に対してその分の同情または感謝ないし謝礼をしなければならない気分になる。その事態を避けるためには、上位者は下位者の不利益を下位者の意思に基づくもの、即ち下位者の選択の結果として認識しなければならない。

上位者は下位者の選択を下位者の地位による不利益の原因とみなす動機を持つ。

上位者は下位者の不利益を発見したとき、その不利益を下位者の選択の結果として認識することに利益を有する。したがって、下位者の不利益を既に知っている上位者は、下位者の選択を発見した時にその選択を下位者の不利益の原因とみなす動機を持つ。

上位者は下位者の選択をそれが下位者の選択であるということにより誤りとみなす動機を持つ。

不利益の原因となる選択は誤りである。

このことから、下位者として気をつけなければならないこと

  • 上位者により誤りとされた選択が実際に誤りである蓋然性は高くない。したがって、下位者には上位者による判断に影響を受けない心構えが必要である。
  • 上位者が誤りでないものを誤りとして指摘するのは彼の心理の安全のためであって、彼が愚かだからではない。したがって、彼を説得して正しい認識に導くのは誰もあまり得しない。
  • もし下位者の上昇志向が上位者による誤った判断からの自由への希望に動機付けられているならば、以上述べたことを踏まえることによりその上昇志向が消失するかもしれない。