VOCALOID和風曲で再生数上位10位以内を研究した結果

Twitterにだらだら書いていたが、VOCALOID和風曲タグで再生数上位10位を研究してみた結果はここにまとめておこう。

  1. 音階は6度抜きエオリアン・スケール(自然的短音階)。
  2. 6度を抜いた箇所つまりvとbviiを繋ぐ瞬間と、iとvの跳躍に、和風感が宿る。
  3. フレーズが2小節単位で1まとまりとして構成されていて、後の小節の4拍目から次のフレーズが始まる。
  4. 和風曲として認識される条件として最も大きいのが動画が和風であること。

なぜ6度抜きエオリアンか

おそらく和風曲はPがまず和風曲を作ろうと思って作るんだと思う。偶然できるのではなく明確に和風曲にする目的を持って。和風曲を作る時にはPはまずマイナー・ペンタトニック・スケール、というか黒鍵の音列を使えばそれっぽくなると考えるんだと思う。これは小泉文夫の用語では民謡音階だ。ここまではわかりやすいのだが、しかし、VOCALOID和風曲には大抵長2度が入る。これは、民謡音階だけではメロディを作るのに苦労するからなんじゃないかと思う。ところが、6度は相変わらず抜いたままなのだ。大抵の和風曲でこうなっている。
これを理論的に考えると、日本の伝統音楽のテトラコルドは中間音が1つしかないと言われるが、おそらくディスジャンクトされた下側のテトラコルドの中間音が1つと言うのはそれほど確固とした法則ではないんじゃないかと思う。それに対して上側のテトラコルドの中間音が1つというのはほぼ絶対に守らなければならない法則なんじゃないかと思う。このことは、『結ンデ開イテ羅刹ト骸』のサビを分析すればわかりやすいかもしれない。この曲は都節の影響が大きいのでVOCALOID和風曲の通常の傾向の外にあると言って良いと思うし、上側のテトラコルドに中間音が2つ登場するにもかかわらず、なおこの法則はおそらく通用する。上側のテトラコルドに短2度と長3度の中間音があるのだが、それぞれ下行、上行の形であると解釈できるので、そうするとテトラコルドの中に2つの音が登場するにもかかわらず、部分を切り取るとやはり中間音は1つであると言うことができる。

フレーズの構成について

この間読んだ小泉文夫の『日本音楽の基礎理論』(1974年初出。平凡社ライブラリー『日本の音』所収)に「このように見てくると、拍節の中の「前後」の対応は、単に拍子を二拍子と規定しているだけでなく、二つの小節で単位を、二つの動機で単位を、二つの句で単位をという具合に倍化していき、結局大きな楽式の形成原理にもなっていくものであることがわかる。」等と書いてあった。この形成原理から言えば2小節でまとまっていることも一応納得できる。その2小節のまとまりの出だしが前の小節の4拍目であることの手がかりはこの本の中には無いが、聴いた感じからしてこれが和風を醸し出す重要な要素なのは間違いない。これは先日俺がボカロ高速曲の分析にあたって「メロディが、2小節を1単位として2小節目の3拍目で終わるのだ。そして4拍目からは次のフレーズが始まっている。」と書いたのと同じことなのだが。
蛇足だがこの倍化による楽式は日本の普通のポップスをも特徴づけているように思う。ここを今後さらに研究したいと思っているし、作曲の際には意識したいと思っている。